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バナナペーパー ~ザンビアを、世界を救う素晴らしい紙~

■バナナペーパー製品を見たことがありますか?

エシカル資材の中でもひときわユニークなものに「バナナペーパー」があります。廃棄されるバナナの茎を原料とし、風合い豊かなこの紙は、人気コスメブランド「LUSH」の紙袋にも使われています。一度は手に取ってみたことがある人も多いのではないでしょうか。「普通の紙とはちょっと違うな」という印象が深く、手に取る人へ与えるインパクトが大きいということで、株主向け配布物にバナナペーパーを使う企業もあるそうです。また、若い層への認知度も徐々に高まっていると考えられ、2017年より、東京書籍が発行する高校用「英語」教科書にバナナペーパーが掲載されています。

左:コスメブランドLUSHの手提げ袋、中央と右:東京書籍発行「英語」教科書、バナナペーパーを題材とするストーリーが教材になっている。

アフリカと日本のコラボで生まれた「バナナペーパー」を読む

■山櫻 高崎取締役に聞く「バナナペーパー」にかける想い

バナナペーパーの正式な商品名は「One Planet Paper®バナナペーパー」といい、ワンプラネット・ペーパー協議会が主幹となり紙の普及を図っています。

バナナペーパーの普及活動を推進する企業の1つが、紙製品事業を主力とする株式会社山櫻です。アフリカのザンビアにある工場を運営し、バナナペーパーメーカーとして事業を展開中です。そして自社商品の名刺、DM封筒、賞状、メモ帳、マスキングテープなどたくさんの製品にこの紙を使っています。
2021年9月、バナナペーパー事業にかける想いを高崎啓介取締役に聞きました。

 山櫻 高崎さんによるSDGsセミナーの様子はこちら
 ≫「第4回SDGs研修を行いました。エシカルな紙を使う意義とは」

山櫻がバナナペーパーに取り組む一番の理由は、ザンビアグリーン工場運営に取り組む意義が大きいからであると高崎さんは話します。オーガニックな生産、児童労働を行わないこと、製品輸送時のカーボンオフセットのほか、優れた点は数多く、広がり続けています。ザンビアでは貧困が課題で、子どもたちも学校に通えないという状況がある中、工場での雇用を生み出し、生活向上につなげています。現在、ザンビアのバナナ工場メンバーは23名、工場で働いて貯めた賃金で、2021年は2名の子どもが大学に進学したそうです。多くの人を笑顔にするザンビアグリーン工場は、環境・経済・社会全体のことを考える大切さを教えてくれます。

■文化を尊重しあうザンビアと日本のパートナーシップ

バナナという植物は驚きに満ちています。バナナは1回だけ実り、実を刈り取った残りの木は廃棄します。伐採の跡に約1年でバナナの茎が再生し、再び実がなります。山櫻ではオーガニック農家と契約してバナナの茎を買い取り、全員が学校に行けるようその一助としてバナナペーパーの取り組みを続けています。今まで捨てていた茎を買い取り、販売することで農家を支援しています。

ザンビアの工場では、バナナの茎から繊維を取り出し、シートにするまでの工程を行う。
日本の和紙工場でバナナの繊維を使ってバナナペーパーを生産

ザンビアでバナナ繊維がつくられ、船に揺られて、日本は越前の和紙工場へやってきます。バナナ繊維にパルプを加え、機械すき和紙の工程で紙生産していくのですが、500年も続く日本の伝統技術でバナナペーパーは作られるのです。1日あたり800キログラムの紙を生産するため、大量のバナナ繊維とパルプを混ぜる様子はなかなかの迫力です。このザンビアと日本の連携はまさに、SDGs目標の17番目「パートナーシップで目標を達成しよう」であり、グローバルな連帯感が築かれています。

■ザンビアという国 ~治安がよく平和だが深刻な貧困が課題~

ザンビアの人口は日本の約10分の1。イギリスから独立して57年間、戦争が1度もありません。日本ともフレンドリーな関係が築かれています。国立公園にはアフリカゾウが群れを成し、魅力いっぱい。ですが一方、貧困地域では深刻な問題をかかえています。1日平均1.9ドル以下での生活を余儀なくされており、国連による最貧困層基準に当てはまります。大人が教育を受けておらず教育の大切さを分かっていないため、子どもたちの就学率向上を妨げて、過酷な児童労働を生んでいます。

ザンビアの子どもたち

■キーワードは「クライメート・ポジティブ」「サプライチェーン」

最後に、「クライメート・ポジティブ」「サプライチェーン」という言葉を紹介します。2021年、バナナペーパー(繊維配合20%以上)は、まだ世界でも珍しいクライメート・ポジティブの紙になりました。「クライメート・ポジティブ」とは、事業や商品生産における工程でCO2を徹底的に削減し、実際の排出量よりも多いCO2を吸収・固定することです。植林やいまある森・人・動物を守ること、再生可能エネルギー等でCO2を吸収します。バナナの木を育ててバナナペーパーを作れば、人々の貧困は減り、緑とゾウが増えます。

そして「サプライチェーン」とは、原材料が商品となって生活者のもとへ届くまでのプロセスのことです。
今後は、サプライチェーンの大本の農場や工場に、人権侵害はないか第三者の監査を受ける時代がやってくると思われます。環境のみならず、労働と安全衛生にも十分な対策が講じてあるか、企業が説明していく時代が到来することでしょう。

私たち日本人は、サプライチェーンの大本にいる存在、例えばザンビアの工場の仲間たちの仕事に励む真摯な姿、子どもたちの笑顔を思い浮かべ、「健康的・文化的な暮らしをしているかな?」「食べていくために、命を脅かされるようなことはないかな?」と考えてみることが大切です。

きらきらとした瞳が印象的なザンビアの子どもたち(左) 生活のため過酷な労働(薪売り等)に従事する女性たち(右)

お話をうかがった方
高崎啓介さん
株式会社山櫻 執行役員、セカンドブランド事業部 兼 IT・マーケティング部門