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ビジネスパーソン必携?!『ターゲット・ファインダー日本語版』ワンプラネット・カフェさん発売。ワクワクする取り組みを始めよう

SDGs17目標の169ターゲットを掲載したツール「Target Finder」の日本語版(オリジナルは英語)がワンプラネット・カフェさんより発売されました。ターゲット・ファインダーは2030年の持続可能な社会づくりに即した事業や取り組みにおいて、本質的で、効率的なアクションのための、迷わないガイドになります。

『ターゲット・ファインダー日本語版』はどのように活用できるか、日本語版プロデューサーであるエクベリ夫妻(株式会社ワンプラネット・カフェ)にお話しを伺いました。誕生秘話や効果的な使い方をご紹介します。

ワンプラネット・カフェのエクベリ夫妻(左:ペオ・エクベリさん、右:エクベリ聡子さん)

「ターゲット・ファインダー」は169のターゲットについて理解し、ゴールへのアクションを確信的なものにしていく教育ツールと聞いています。(編集部:以下省略)

“まず最初に、SDGsは、これまでの数多くの国際会議を通して議論されてきた様々な課題を集め、一旦2030年という目標年を決めて整理されたものです。
世界中の全ての人々に関わる内容であり、みんなが行動を起こすことが大切ということで、皆さんもよくご存じのカラフルなロゴとシンプルなスローガンが生まれました。現在、SDGsが世界各国で関心を集めている一つの理由は、あの魅力的なロゴやコミュニケーションシステムにあると言われています。
SDGsの認知度は徐々に高まる一方で、169のターゲットについての理解は日本でも、スウェーデンでもまだまだ浸透していません。169のターゲットは、SDGs目標の羅針盤とも言えるもので、その活用を促すためには、より身近に捉え、理解を深める機会を増やす必要があります。そのための新しいツールが「ターゲット・ファインダー」です。「ターゲット・ファインダー」で世界の目標がグッと身近に感じるようになりアクションを起こしやすくなると思います。”

「ターゲット・ファインダー」は扇状に広げられて、カードをずらしながら連続で見ることができますね。文字は読みやすく、イラストも分かりやすく、色が美しいです。

“169のターゲットは、国連のサイトや様々な書籍などで読むことができますが、なにしろ長く難しい文章が多いことがハードルとなっています。この「ターゲット・ファインダー」では、SDGs17目標と同様、169のターゲット一つひとつに分かりやすいロゴとスローガンをつけて紹介しています。どうでしょうか、手に取りやすく、持ち運べて、手元に置いておきたくなるものになったでしょう。とても気軽に誰でも使いやすくなったと思います。
「ターゲット・ファインダー」は、SDGsの17目標のロゴデザインをはじめ、世界に普及浸透させるためのコミュニケーション全体をデザインしたJakob Trollbäck(ヤーコブ・トロールベック)氏が開発したものです。開発者のヤーコブ氏は日本が大好きで、実はこの広げるカタチは「日本の扇子」から着想を得たそうです!とても素敵な秘話でしょう?この発想をもとにヤーコブ氏のザ・ニュー・ディヴィジョン社(スウェーデン)で制作されました。オリジナルは英語版で、そのあと、外国語版としては初めて『日本語版』ができました。現在、イタリア語版、スペイン語版も準備が進んでいるそうです。

日本はさまざまな面でサステナビリティの資質が高いと思います。もったいない文化はとてもいいこと。でも、日本にいて感じるのは、日本は直感的や限定的に12番、13番、などと選んで始めるケースも多いということです。そうなると、本質的な課題や目標の意味を見落としやすく、せっかく力を入れてもSDGsが目指す姿とは異なる取り組みになってしまう、ということにもなりかねません。169のターゲットを知ることで、現在取り組んでいることが目標の方向性と合っているのか違っているのかに気付くことができ、より効果的な取り組みにもつながります。国際的に協定された目的地への地図を手にしていると思ってください!”

なるほど、手で広げる感触は楽しいですね。このカタチになったからこその革新的な使い方を伝授してください!

“「ターゲット・ファインダー」は、パラパラと広げて見ていると、書籍などでは気づきにくいターゲット間の“横のつながり”が見えてくるのです。これはとても大切なポイントです。スコープさんが取り組んでいる「食品ロス削減」で見てみましょう。目標12「つくる責任、つかう責任」でのターゲット12.3「食料廃棄を半分に」が相当しますね。でもこれだけじゃない、次の12.4「化学物質、廃棄物の責任ある管理」にもつながるのです。なぜか?食べもので使われている化学物質があるし、食べものを包装しているごみがあるからです。そして、食べものの生産や運搬から出るCO2もあるので、目標13「気候変動」にもつながります。どうでしょうか、取り組んでいる一つの課題が「ターゲット・ファインダー」をめくっているとどんどんつながりますよ。

大切なポイントの二つ目、「ターゲット・ファインダー」は、一つの目標を“深く掘り下げる”きっかけをつくります。めくっていって、例えば、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は差別や格差の問題です。5.1「女性および女児に対する差別をなくす」ってどういうことかについて意見を交わしてみましょう。
ジェンダー平等においては、日本は国際社会の中で大きく遅れをとっています。社会に深く根づく文化や慣習の影響もあり、男性の多くは無意識にそのような行動や判断に関わっているかもしれないし、女性もあまり意識せず受け入れているような場面も多いと思います。最近では、女性の役員の数・割合はよく指摘されることですね。数だけ増やせばいいのか、といった議論を聞くこともありますが、確かに理想の姿としては、男女の区別なく、人材として優れていれば役員になる、ということだと思います。

一方で、社会や企業が大きく変わる必要がある時は、少々荒技でも、役員や議員の何割を女性にする、といった目標を掲げ、一気に変化を起こすことも重要だと言われます。例えば、大手企業の中で女性一人二人が役員になっても、女性ならではの視点や多様性の効果は活かされにくいと聞きます。男性も女性も様々な視点があり、その多様性を生かしていくことが大事ですね。
私たちのザンビアのオフィスでは、リーダーの半分が女性で半分が男性です。それぞれの強みや視点を尊重し、とてもいいバランスでチームを率いてくれています。
5.1「女性および女児に対する差別をなくす」だけでも様々な議論ができますね。
横のつながりも縦の掘り下げも、会話のきっかけをつくるということが大事で、会社や組織の中でたくさん話してほしいです。「ターゲット・ファインダー」をめくることで会話や思考を広げるきっかけになります。どんどん使って169のターゲットを自分の知見にして周りの人に伝えていってください。”

どの目標やターゲットも世界規模の内容で近づき難く、どこから手をつけたらいいのか分からない、という声を聞きます。「日本にはあまり関係ない」、「自分の会社でできそうなことはない」「自分の業務に置き換えられない」など。また日本の事例を読んで当てはめてアイデアを出しても、手応えがつかめず、目標さえわからなくなる。考えても空回りしてしまう時はどうしたらいいでしょうか?

“「身近なこと」で考えてみるといいと思います。
実はどのターゲットも、大きなところから小さなところまで、事象や視点が必ず見つかります。例えば、目標16は「平和と公正をすべての人に」です。日本は平和な国ですし、この目標はすでに達成、と思われる方も多いかもしれません。しかし、この目標の1番最初に来るターゲット16.1は「あらゆる場所での暴力を減らす」です。これは決して戦争だけではなく、とても身近なことで、家庭内暴力であったり、夫婦喧嘩、学校でのいじめなどにも及びます。またそれに続くターゲット16.2は「子どもを虐待、搾取、取引、暴力から守る」で、日本でもまだまだ取り組むべき課題があることがわかります。
また、ターゲット15.5「生物多様性を守る」は絶滅危惧種の問題にも関わります。例えば、日本では古くから好まれて食べられているうなぎも、今では絶滅が懸念される貴重な資源になっています。資源としての適切な管理が求められています。”

各カードのうしろ面が面白いですね。興味深い「言葉」や「事象」が書かれてあり、これらの言葉に、背中をそっと押される温かみを感じました。とても有機的でポジティブな魅力だと思います。

「ターゲット・ファインダー」のうしろ面

“「ターゲット・ファインダー」の魅力として、まず、虫眼鏡がないとわからないグラフではなく、シンプルな表現で、絵を通してわかるように、世界中の誰もが理解できるように表現しています。これはデザインにおけるスウェーデンルールでもあります。
もう一つの魅力は、「ターゲット・ファインダー」のうしろ面です。見るのが楽しい、リラックスする!と思ってもらえれば大成功でしょう。「言葉」や「事実」が書いてありますが、あえて何をした人がどこで言ったのかを記さないで名前だけにしています。調べると結構すごい人だとわかりますよ。例えば、ターゲット17.15「SDGs政策実施での各国リーダーシップの尊重」のうしろ面は、『我々は追いつこうとしていない。先導しようとしているのだ。アシシュ・タッカー』。この人はルワンダの実業家で、アフリカ初のスマホ工場をつくり、ルワンダ人やアフリカ人向けの100%アフリカ産のスマートフォンをつくった方です。ルワンダはスウェーデンとも親交が深く、政策や人を助ける福祉の精神など国民性が似ていると思います。このように、うしろ面には、幅広い歴史的なものから起業家まで、かっこいい言葉も多く、もちろんSDGs要素もはいっています。目標、ターゲット、うしろ面もぜひ楽しんでください!”

<取材後記>

エクベリ夫妻のお話しは、たった一つしかない地球への活動を続ける真摯な志に触れることができた貴重な時間でした。取材を終えて、あらためて『ターゲット・ファインダー日本語版』を手にしています。とにかく見やすく、美しいデザインで飽きず、扇子のように広げて、おもて面やうしろ面を読んでいるとサステナブルワールドが楽しめます。そして、親子で「ターゲット・ファインダー」を使って学び、ディスカッションしている方もいると聞き、想像外の素敵な使い方だと心が弾みました。ポジティブにゴールへ向かおうと導いてくれるエクベリ夫妻。取材に快く応じて頂いたことに深く感謝いたします。

左:エクベリ聡子さん、中央:ヤーコブ・トロールベックさん、右:ペオ・エクベリさん

Profile紹介

株式会社ワンプラネット・カフェ
代表取締役社長:エクベリ聡子氏(Satoko Ekberg)日本出身
取締役、環境マネージャー:ペオ・エクベリ氏(Peo Ekberg)スウェーデン出身

会社概要 2012年2月設立。設立前からの長年のサステナビリティ推進活動経験があり、日本、スウェーデン、アフリカの拠点で事業活動。サステナビリティの原理原則とスウェーデンでの成功事例に基づきサステナブル·ビジネスを支援。2016年フェアトレード認証(WFTO)取得、2020年経済産業省のSDGsに取り組む良い事例企業認定。事業分野はコンサル・講演、視察&研修ツアー、バナナペーパー、ショップなど。
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ヤーコブ・トロールベック氏(Jakob Trollbäc)スウェーデン出身
デザイナー兼クリエイティブデザイナー。ニューヨークのデジタルスタジオで働いたのち、「Trollbäck + Company社」を設立。事業分野はテレビ・映画・広告の戦略的ブランディング、モーショングラフィックスなど、エミー賞受賞歴あり。2015年に国連サミットで採択されたSDGs17目標のコミュニケーションシステムを制作し、世界共通語となった。2017年「The New Division社」(ストックホルム)を設立。サステナビリティに特化したコミュニケーションエージェンシーとしてより良い世界の実現に向けて活動を続けている。
The New Division社≫

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