SCOPE GROUP Sustainability

第6回SDGs社内研修を行いました。東北北欧スタイルの里山で紡がれる幸福論に触れる

サステナビリティーへの共通言語醸成の機会に

スコープグループは2022年11月9日、SCOPE GROUP SDGsセミナーを社員教育の一環としてオンラインで実施しました。サステナビリティー実践のトップランナーによる講話、社内の年次「FSCⓇCOC認証更新研修」の2部構成です。

第1部では山形県米沢市在住の里山ソムリエの黒田三佳さんを講師にお迎えし、「里山から学ぶみんなを幸せにするものづくりとことづくり」をテーマにお話しいただきました。黒田さんは客室乗務員時代にデンマークを訪問し、その後、山形へ移住。現在は人材教育を本業としながら、人と自然が共生している里山の暮らしの魅力を発信しています。
今回、私たちは、サステナビリティーについての考え方を広げたい、アイデア創出に導いてくれる言葉を持ちたいという想いで講義に臨みました。

(写真:参加者はシートを活用し、心に留まった言葉を拾ってひらめきを広げていく)

   

デンマークから着想を得た「東北北欧な暮らし」

東京と米沢市をオンラインで中継して、セミナーが始まりました。木の家でリラックスしている黒田さんは、まるで居心地のよいカフェにいるような雰囲気で私たちをいざないます。インプットに重きを置く日本の教育と違って、人にインスピレーションを与え、何かを引き出す「エデュケーション」のスタイルで進行しました。

(写真:立冬を迎えた米沢の様子を語る黒田さん。現地では冬のにおいがするとか。)

さっそく屋外へ。黒田さんの家の裏は、広葉樹の森が広がる平地林。面積は1200坪ということで、ちょうど東京ドーム1個分!この豊かな緑の中で、畑仕事をしたり、ブランコで休憩したりと、里山スタイルの暮らしを見せてくれました。そして、山形とデンマークは、風情や人がどことなく似ているのだそうです。

(写真:自宅の裏に広がる森を整え、里山に。初夏はカフェ、冬はクロスカントリーなどを楽しむ)

聴講者にとって、デンマークと聞いて思いつくのは、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドと並ぶサステナビリティー先進国であることです。SDGs達成度ランキング2位(2022年10月)、国連の関連団体による「世界幸福度ランキング」2位(2022年3月)というデータもあります。そのデンマークで暮らしたことのある黒田さんは、デンマークの国民性について、コロナを機に、「幸せなリーダーが個人と組織の幸せを考える時代」になったと話します。アフターコロナにおいては、デンマークのコミュニティーのリーダーは、楽しく暮らすために仕事をする姿勢が強まったそうです。自身が今幸せであると明言し、非常に家庭を大切にします。リーダーの自宅の食卓にはニシンの酢漬け、ピクルスなど、素朴な料理が並び、家族で一つの話題について盛り上がるそうです。「家族は最小の単位。持続可能な幸せは、一人の人から始まる」と黒田さんは話します。

工芸品に込めた想い 東北北欧流の商品開発

里山スタイルからは独特なものづくりが生まれています。黒田さんは自身が開発した商品について語りました。

『どんぐりなつめ リーフ台』

※商品画像 米沢幸林工芸HPより引用

どんぐりの形をした容器は山形産の木から作ったもの。どんぐりを持っている女の子は幸せになるというデンマークの逸話も、商品に込めた想いのひとつ。

『キャンドルスタンド』

※商品画像 米沢幸林工芸HPより引用

「ろくろ」で作ったキャンドルスタンド。里山の材料を使った無類のデザインには、黒田さんのこだわりが詰まっています。ここで大事なポイントを得ました。ハイテクとは真逆のローテクが、東北と北欧の共通点だそうです!

これらの工芸品一つ一つから広がる「Story(物語)」に、聴講者たちはものづくりの奥深さを感じました。

夜になると灯すキャンドルも手づくり、畑で育てられた野菜や森に自生する花や葉などもテーブルや皿に置いて美しい飾りものに。

自然と共生し、自然の素材をローテクに家の中にとりいれると、人はリラックスできるのです。東北北欧スタイルの「環境」が癒しの要素に満ち溢れ、みんなを幸せにする商品開発へつながることがわかりました。
そして、その「環境」で暮らす「人間」の心の持ちようでも商品開発が生まれるという話を続けます。

デンマークと日本について、デンマークの思考には「ゆとり」があると黒田さんはみています。日常生活を送るうえでの利便性は圧倒的に日本が勝ります。食品のパッケージは非常に開けやすい親切設計で、スーパーマーケットやコンビニエンスストアには商品・道具が揃っていて、日本の生活者はその恩恵を当然だと考えています。一方、デンマーク人は、あまり便利さにこだわらず、完璧でなくていいじゃないか、と少々不便なことも受け入れて、文句を言う人はいないそうです。そして、黒田さんは「ゆとり」を「遊びの精神」と表現し、遊びで作ったバッグを見せてくれました。

『森のくるみの木の皮で編んだバッグ』

このバッグは英語教室の教え子たちにも大評判だそうです。「ゆとり」や「遊びの精神」がある豊かな暮らしとは何かを教えてくれるものづくりです。それにしてもこれは素敵すぎる一品!

意識的に「ゆとり」を持つと、今まで気づかなかったものが見えてくるのかもしれません。家やパソコンの中に置かれた情報の山、実はその中に大切なものが埋もれていることも。黒田さんがたまにブランコに乗るように、私たち多くのオフィスワーカーも、いつもと違った時間の中に身を置いて、呼吸を整えたいものです。

里山ソムリエが考える循環型社会

人間の営みは自然の一部で、季節、命、もの、贈与交換、仕事、人の気持ち、生きたものはすべてつながっていて、すべてが循環している、と黒田さんは考えています。そして私たちに投げかけました。「コンピューターでのデータ解析も尊いですが、すこし離れてみて、自分の感覚でどう思うかをまず体験し、その後でデータと照合して自分の感性を点検するのもいいかもしれません」と。里山に来てみてというお誘いにも思えて私たちは微笑んでしまいました。

自分の感性を研ぎ澄ましたら、生きたものすべての幸せをつなぐものづくりとことづくりへ。その時に黒田さんが大切にしていることは、「Story(物語)」「Scene(風景)」「Smile(笑顔)」ほか『10のS』であると伝授していただきました!私たちが取り組むサステナビリティーへの考え方が広がった瞬間です。そして、アイデアに導いてくれる言葉を持ちたいという想いに応えて、「Reduce」「Reuse」「Recycle」のほか「Respect(他への敬意)」「Reactivate(再導入する)」「Recreate(気晴らし)」などの『12のRアクション』~SDGsアクションのひらめきとときめき~を伝授していただきました!私たちは、里山ソムリエ直伝の循環型社会づくりへの一歩を踏み出すよう、背中をおされたのです。

最後に、黒田さんはパートナーシップを結びたいと思っている個人の農家さんや組織があり、スコープグループもともにつながることで社会貢献とビジネスのチャンスがあると教えてくれました。

(写真:聴講者は、課題解決のためのヒントを記録しました)

   

FSC認証規格遵守のため社内運用ルールを再確認

第2部として、カスタマーサクセス部部長・諸星祥行さんによる講習を実施しました。スコープは適切に管理された森林から、管理された輸送手段で、管理された工場に移動してきた「FSCⓇCOC認証紙」を扱っています。運用には厳格なルールがあり、FSC 認証規格遵守の一環で年に1回のペースで社内教育が義務づけられています。今回で第3回目の実施となりました。
アミタ株式会社様の監査のもと、スコープのFSC®COC認証運用事務局が運用しています。当日は、認証紙を使う意義、使用の際の申請の手順、帳票の管理、制作部におけるデザイン見本の審査基準などを確認しました。
受講者からは「FSC証紙紙はコストが高いということで、なかなかお得意様に受け入れられにくい。認証紙を提案するメリットを説明できるようにしたい」との声がありました。

   

私たちスコープグループは、サステナビティーについて主体的に考えつづけ、アクションを起こしてまいります。

   

第一部 講師プロフィール

黒田三佳さん:里山ソムリエ。人材育成アカデミーローズレーン代表。
国際線客室乗務員として活躍後、デンマークでの暮らしを経て米沢へ移住。
著書に『森に暮らす』(山形会議パブリッシング)がある。