SCOPE GROUP Sustainability

SCOPE GROUP SDGs未来塾 第2回店舗SXセミナーを開催しました。40以上の食品ロス削減成功事例から「小売りの使命」を知る

■食品ロスについて初耳初見の情報が満載の90分間

株式会社スコープは2022年9月より無料・一般向けセミナー「SCOPE GROUP SDGs未来塾」を開催しています。第2回店舗SXセミナーは「食品ロス問題に小売りはどう取り組むべきか」のテーマで、2022年10月5日(水) ~10月11日(火) に録画配信で実施しました。

講師は、食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんです。10月26日に『北欧でみつけたサステイナブルな暮らし方』(青土社)の出版を控えた井出さんは、これまでにも多くの食品ロス問題の書籍を執筆し、その他、テレビやSNSを通じて、食品ロス問題の情報を発信し続けています。今回は、「小売業界」の方に向けた独自の数値情報や国内外の実践事例を数多くご紹介いただき、初耳・初見だった人も多かったことでしょう。Q&Aコーナーでも新たな情報で話は広がり、大変豪華なプログラムとなりました。
食品ロス問題に関する事件がトップニュースになることも少なくない昨今です。日本には「もったいない」という素晴らしい言葉がありますが、反面、日本は食品ロス大国であるという現実が重くのしかかり、「何がうまくいっていないのか?」という聴講者たちの疑問を晴らすべく、井出さんは講義を実施しました。

経済、社会、環境――食品ロスは諸問題に広くつながる

セミナー前半で、食品ロスの本質――すなわち、どうして社会にとって問題なのか、という基礎知識から学びました。「食品ロス」とは、まだ食べることができるのに廃棄される食品のことです。中身は2つあり、1.生産から流通の過程で発生する食品の廃棄「フードロス」、2.小売り・外食・家庭から発生する「食品廃棄物」。これらを合わせて、食品ロス(Food Loss & Waste)といいます。

(写真:井出さんの取材時、数千円の和菓子が捨てられていたことも)

食品ロスは何が問題なのか、井出さんの鋭い独自の分析で集められた数々の統計データで、莫大な経済損失、社会への影響、環境への負荷があることが明らかになり、コンビニ、スーパーなど小売業にかかわる方でも、「無駄は予想以上だ」と、ショックを受けたのではないでしょうか。その無駄の一例として、店舗から出るごみは家庭ごみと同様に焼却処分されますが、環境省によると、ごみ処理にかかる費用は年間2兆1290億円。費用は税金から支払われています。

日本の食品ロス問題解決への取り組みは、海外諸国に後れを取っており、2019年10月1日に「食品ロス削減推進法」が施行されるも、事業者にペナルティーや税制優遇がないため、その効力はまだまだ。次の法改正が待たれるところです。

■飢餓・貧困や地球温暖化を逆転させる食品ロス削減

SDGs17の各目標には、具体的な行動目標(ターゲット)があり、「食品ロス削減」はその具体目標の一つで、世界で取り組む社会課題です。

目標12「つくる責任、つかう責任」のもと提唱されるターゲット12.3
「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。」(外務省の仮訳より)

(写真:食品ロス量は減少傾向。2030年の時点で491トンまで減らすのが現在の目標)

SDGsの目標2030年に向け、日本は食品ロス量を徐々に減らしつつありますが、諸外国の大胆な目標設定と比較すると、「日本はもっと野心的な目標を掲げてもいいのでは」と、井出さんは提言します。
世界規模での食品ロス量はその経済的損失が「2.6兆ドル」。それがもしも使えたのなら一体何ができたか?いくつ学校、病院、道路を作れたか?と問いかけます。教育、医療、雇用などさまざまな面で苦しんでいる人々を救済する機会が損失しているのです。聴講者が見つめる画面に、食品ロスの罪が列挙されます。
基礎知識編だけでも、さまざまな気づきがありました。東京オリンピック・東京パラリンピックでのボランティアの弁当廃棄事件、ファミリーレストランでの度を越した大量注文など、私たちが既に知っていた事件も食品ロス問題の一部だと理解しました。食品ロス問題があるのに飢餓に苦しむ人もいる理不尽を深く受け止めました。そして食品ロス廃棄で出るCO₂は、世界第3位の温室効果ガス排出源であるという事実を知ることで、地球温暖化を救うカギは食品ロス問題の解決にアリと真摯にとらえました。

小売業が打つべき対策とは? 40以上の事例から学ぶ

セミナー後半では、食品ロスを出さないための小売りの事例について学びました。日本が食品ロス大国である理由には、「3分の1ルール」などの商習慣、出荷条件の厳格さなどがあります。しかし、そのような制約の中でも、工夫をこらし、食品ロス削減に成功している事業者は多数あります。デジタルソリューションの導入、売ることができない食品の活用法など、たくさんの成功事例が、私たちに「アイデア次第で食品ロス問題は解決できる」と教えてくれます。

(写真:井出さんのこれまでの取材の成果――食品ロス問題対策事例が40件以上も)

事例の中でも、井出さんが声を大にして解説するのが、商品パッケージの大切さです。賞味期限とはどういう意味なのか、それをお客様に伝えるパッケージ事例として、日本の商品が登場。しかし日本でよく見かけるのはお得なキャンペーン告知が目立つパッケージ。一方で、サステナビリティー先進国である北欧諸国では食品の鮮度、食べごろや廃棄のタイミングなどをパッケージの目立つ場所で伝えています。パッケージはお客様とのコミュニケーションの場ですから、エシカル消費を促す場として有効なのです。

(写真:ロースハムのパッケージは、賞味期限を過ぎても食べられることを伝えている)
(写真左:商品の鮮度や価格を管理するデジタルソリューションの事例)

濃度の濃い講義のあと、Q&Aコーナーが続きます。「小売店舗から寄付しやすい仕組みづくりも食品ロス削減につながるか?」「日本の法規制や行政指導はどうなっていくか?」といった疑問に井出さんとSDGs未来塾が深堀りしていき、セミナーは終了しました。

■習慣でやっていたことを見直そう

今回のセミナーは、店舗、サービス、サプライチェーンについて考えをめぐらせるだけではなく、自身のエシカル消費事情について、しっかり点検をする機会となったのではないでしょうか。
「適切な食品包装になっているかな?」
「賞味/消費期限の意味を、店頭やパッケージで正しく届けているかな?」
「自分は、てまえどりの習慣が身についているかな?」
環境に甚大な負荷をかけて食品を生産したのにそれを捨てることの不毛さ。このセミナーを聞いた今から終わりにしましょう。「工夫次第で、食品ロス削減、売上アップ、働き方改善など、できるではないか!」と胸がすっきりしたならば、今すぐアクションを起こしましょう。

■VOICE

聴講者からは「客観的な統計データの説明で現状の理解が深まりました。」「小売業・消費者の意識、社会システム、行政、法制化の日本の遅れを共有できたと思います。」「家族に伝え、冷蔵庫や貯蔵庫から出るロスを減らしたいと思います。」という声がありました。

スコープグループは、「SCOPE GROUP SDGs未来塾」の開催を通じて、皆様とともにSDGsの達成に向けた社会課題の解決について考え、そしてアクションを起こしてまいります。今後のセミナー開催予定はPeatix「SDGs未来塾」などでお知らせしてまいります。皆様のまたのご参加をお待ちしております。

    

■講師プロフィール/皆様へのメッセージ

井出留美さん
株式会社office3.11代表取締役
食品ロス問題ジャーナリスト
博士(栄養学)

「食品ロス削減は働き方改革です。食品ロスを減らすということは単なる無駄減らしではなく、自分たちの働き方が楽になる、暮らし方が非常に快適になるということにもつながります。これは私がいくつか取材をして事例を見ていて、とても肌身に染みて感じたことです。適量を作って、適量を買って、適量を消費するということに近づいていけばいくほど、私たちの暮らしや仕事が快適なものにつながる。そう信じています。」

office3.11井出留美オフィシャルサイト http://www.office311.jp/profile.html