SCOPE GROUP Sustainability

SCOPE GROUP SDGs未来塾 第1回「ソーシャル・イノベーションセミナー」を開催しました。海洋ゴミ問題と格闘する19歳が明かす「清走中」発案秘話と社会的インパクト最大化の法則

■社会課題を市場とするビジネスについて学ぶ

株式会社スコープは、社会貢献活動の一つとして、2022年9月より無料・一般向けセミナー「SCOPE GROUP SDGs未来塾」をスタートしました。9月1日(木)には「店舗SXセミナー」を開催し、小売り・流通業界の店舗におけるサステナビリティーの実践例を聴講。今回9月21日(木)には、「ソーシャル・イノベーション セミナー」と銘打って、社会課題を市場と捉え事業を推進するソーシャルビジネスについて知見を深めました。

■若きリーダーがイベントを運営しゴミ拾いの楽しさを全国に拡散中

講師は長野県生まれの19歳、北村優斗さんです。高校2年生の時に、ゴミ拾いの楽しさに目覚め、現在、エシカルEC事業を手掛けるスタートアップの株式会社Gabで、清走中事業部長として自ら発案したイベント「清走中」を全国展開しています。「清走中」はゴミ拾いにゲーミフィケーションを融合した、まったく新しいイベントです。初開催 2020年は長野県長野市で、参加者は120名。以降、東京、広島など、2022年9月時点で全国10地域にて開催し、参加者は1600名以上にのぼります。

「清走中」は、町全体を探検のフィールドとみなし、参加者自身が主人公となってゴミ拾いを楽しむ斬新なイベントです。あちこちで見つかるゴミは町を汚染する悪いモンスター、気持ちを一つに共通の敵に立ち向かう参加者たちはあたかもオンラインゲームで協力プレイを楽しんでいるプレイヤーのよう。拾ったゴミの種類・量をポイント換算、特別アイテムの入手、黒スーツのハンターの登場などギミック満載で、参加者の心をわし掴みです。「清走中」は3年弱という短期間で「ゴミ拾いは、つまらなそう、地味」というイメージを覆しました。

北村さんに「清走中」が芽吹いたのは、子どものころ好きだった江の島の汚染に衝撃を受け、さらに2050年には海の中のプラスチック量が魚の重さを超えてしまうというショッキングな調査結果を知ったことからだそうです。清走中事業部の長期ビジョンは、「ゴミ拾い」をエンターテインメント化して世界中のインフラにし、海洋プラスチック問題を解決するという壮大なスケールなのです。

■マネタイズへの第一歩、クラウドファンディングで事業化段階へ

北村さんは、2022年5月29日に、「参加者がお金を払ってでもゴミ拾いをする」という革命の日を迎えました。北村さんの地元・長野県での開催は無料でしたが、全国展開の皮切りとして開催した「清走中 渋谷編」の反響を受け、「清走中 大崎上島編」からは、大人1000円、子ども500円の有料イベントにしたのです。チケットは即完売、お金を払ってでもゴミ拾いをしたい方が大勢いるということが証明されました。

この第一歩は、「クラウドファンディング」で実現できました。資金を得て事業化の軌道に乗せるというスタートアップ企業が突き当たる壁を乗り越えたのです。株式会社Gabは、起業家やフリーランサーが集う「渋谷キューズ」に入居し、働く環境が改善され、人脈も広がっているとのこと。

写真左:クラウドファンディングを実施し、約2カ月間で342万円の資金を得ました。
写真右:「清走中 渋谷編」200名による参加者、2時間で130kgのゴミを回収。

    

■多くの強みを内包した「清走中」のビジネスモデル

長野、渋谷、大崎上島(広島)、板橋、甲府、上越のすべてチケット完売しているこの革命的なサービスが成り立っているのは、「清走中」に関わる主体「参加者」「地域」「企業・自治体」にそれぞれメリットがあるからで、要は「自治体」の存在だと具体的に話してくれました。地域の方、自治体の方にプレゼンするためのスライド資料のサンプルを次々と投影され、私たちは学びました。北村さんが学生団体として主宰していたころは「清走中」が事業になるとは思わず、ビジネスモデルを作るのには大変な苦労があったと裏話も聞かせてくれました。

■官民協創で活動のインパクトを最大化する北村哲学

「清走中」というビジネスについてからくりが明かされたのち、いよいよ北村さんは社会起業家としてのポリシーを語ります。「官民協創とは、お金を払って企業にお任せすることでもなく、社会貢献のために赤字を掘ることでもありません。官と民がお互いの強みを出し合ってできるのです」と力強く話します。そして、株式会社GabがNPOではなく株式会社という形態を選んでいる理由も話してくれました。NPOでの収入源より、株式で調達する方が世の中に通用する大きなインパクトを与えられるソリューションが作れる――真の官民協創を実践し、柔軟な資金調達で大きな夢を追う――これが、「清走中」全国展開に至るまでの紆余曲折を経て培われた、北村哲学です。

今後は、さまざまなペイン(枠)との掛け合わせでさらに展開の幅を広げていく、海洋プラスチック問題の解決のために「清走中」以外の事業にも挑戦する、という展望も飛び出しました。

■パートナーシップ構築でイノベーションを成す

「清走中」がビジネスとして成立している最大のポイントは、自治体とのパートナーシップ構築。SDGsを達成するために私たちは職場や家庭でできることを見つけ、改善を積み重ねている中、1人ではなかなかイノベーションへつながらないのが現状ですが、北村さんのようにパートナーシップを構築することで、イノベーション創出の可能性は一気に高まります。そしてイノベーションは世の中に大きなインパクトを与えます。「清走中」は多くの人を巻き込む活動で、口コミやメディアを通じて社会の隅々まで伝播し、海洋プラスチック問題根絶のための推進力となっていくでしょう。「スタートアップ企業と自治体」のように、背景が大きく異なる組織が連携するには、目的の共有、つまり「ゴミ拾い」で社会をよくしようなどの、全体イメージの共有が欠かせません。今すぐ私たちができること、それは自治体や異業種などあらたなパートナーシップ構築のために、自身の強みを磨いていくこと。そして、社会に対してパートナーシップ構築に積極的な姿勢を見せていくことではないでしょうか。

VOICE

聴講者からは「清走中コンテンツに注目されがちですが、根底にある活動への思い、ビジネス戦略設計、大衆心理についてなども聴けました」「身近なことへの違った視点に触れ、実現方法は無限だと分かりました。」という感想がありました。

スコープグループは、「SCOPE GROUP SDGs未来塾」の開催を通じて、皆様とともにSDGsの達成に向けた社会課題の解決について考え、そしてアクションを起こしてまいります。今後のセミナー開催予定はPeatix「SDGs未来塾」などでお知らせしてまいります。皆様のまたのご参加をお待ちしております。

■講師・ゲスト プロフィール

北村優斗さん
長野県生まれ、19歳(2022年9月時点)。高校2年の夏にゴミ拾いの楽しさに目覚め、「清走中」を発案。株式会社Gab清走中事業部長。趣味は格闘技観戦と格闘ゲーム。「海洋ゴミ問題を失神KOで倒す」と宣言中。

関連URL
株式会社Gab: エシカルな暮らしをすべての人に | 株式会社Gab
「清走中」公式サイト: 清走中コーポレートサイト (seisouchu.com)