SCOPE GROUP Sustainability

第5回SDGs社内研修を行いました。CO₂削減のために企業ができることとは

■脱炭素について考える90分セミナー

スコープは、2022年5月30日(月)、国立環境研究所/東京大学に所属する科学者の江守正多さんを講師に招き、「気候変動とCO₂の関係、今、企業が取り組むべきこと」をテーマに社内セミナーを実施。オンラインで83名が聴講しました。グループは2020年3月にサステナビリティー基本方針を策定。3期目となる今期の重点課題を「スコープ1・2・3のCO₂排出量の削減」としています。今回のセミナーでは、気候危機の実態や原因、世界でカーボンニュートラルを目指す理由を再確認。企業としてどんな具体的なアクションができるのかを考える機会としました。

著書の出版、YouTubeでの動画配信と幅広く活動を広げる江守さんですが、もともとの専門は気候変動のシミュレーション。ノーベル物理学賞受賞の真鍋淑郎さんと同じ分野での研究も重ねてきており、まさに気候変動研究の最前線で活躍中!
その江守さんに、気候変動の全体像、温暖化は人類にどんなリスクをもたらすのか、地球環境が直面しているのは何かをお話しいただきました。投影されるスライド上には、物理・科学・統計などからのアプローチではじき出された数字が次々と現れます。私たちは、サステナビリティーを推進する際には数値化して検証することが大切であると心得ていますが、今回は数字の意味する気候変動の深刻さをグラフや地図、動画などのビジュアルで確認し、大変ショックを受けました。

■気候変動の現実に真摯に向き合う

地球温暖化が進むのは、温室効果が強まり赤外線が多く大気に吸収され、また地表に戻ってきているからです。温暖化の要因は、気候変動の科学を評価する組織 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)により、「人間活動による温暖化には疑う余地がない」(「IPCC WGI AR6 Figure SPM.1b」)と断定され、2021年8月のこの公表の深刻さを江守さんは伝えます。

データの中で最も印象深かったのは、世界の平均気温が高いまま年月を重ねると気候はどうなってしまうのかという、シミュレーション動画です。気温の上昇の度合いが「非常に高い」まま未来を迎えると、著しい気温上昇で北極海の氷が減ってしまうのです。世界平均海面の上昇は2300年には最悪2~7mにもなり、何よりも恐ろしいのは海面上昇は数百年~数千年続くことも予測されていることです。

「温暖化を止めるため、気温上昇を1.5度に抑える努力が必須。今世紀半ばに世界でカーボンニュートラルを実現しないと、1.5度が達成できない」この事実を真摯に考えました。

深刻なデータが出ている状況で、江守さんは、社会のトランスフォーメーション(大転換)の重要性を伝え、CO₂を排出しない再生可能エネルギーなどの普及で石炭や石油に頼らなくてもいい、「卒・炭素」の実現を提唱します。石油や石炭など化石燃料が枯渇することを心配していたのは、少し前の話。今では、化石燃料がたくさん余っている状態で使わなくなることが目指されており、人類は「化石燃料文明」を今世紀中に卒業しようとしています。卒業のためには、単なる制度や技術の導入ではなく、人々の世界観の大転換が必要なのだと胸に刻みました。

■工場を持たない企業は脱炭素化が容易

質疑応答タイムで、江守さんから私たちに「みなさん、どれくらい脱炭素ができると思いますか?この話を真に受けますか?」とストレートな問いが投げかけられました。スコープグループサステナビリティー推進リーダーは、「製造を行わない企業からの視点だと、脱炭素のために、現実的に何ができるのか自問している。」と回答しました。私たちは総合企画会社であり、非製造業であり、工場を持たないことで、コミュニケーションづくりに注力する企業です。
江守さんからは「製造業やエネルギー産業はビジネスそのものが問われ、脱炭素化は簡単ではありません。しかし、製造業以外の企業は再生可能エネルギー100%の電気を調達すれば、スコープ2までは容易に達成可能です。」とアドバイスをいただきました。

■前向きなコミュニケーションで脱炭素社会の実現へ

今世紀半ばまでに気温上昇を1.5度までにおさえるため、先進国や日本はカーボンニュートラルを宣言。自国での達成に注力するだけではなく、途上国が脱炭素しながら経済成長を遂げられるような支援も世界の先進国は考えなければなりません。
ここで江守さんから気になるデータが示されました。日本は気候変動対策に対して、ネガティブであるというのです。世界の人たちは温暖化対策が進めば生活はよくなると考え、日本は生活のレベルを落としそれを我慢することだと思っているそうです。これはインパクトのあるデータです。聴講アンケートでも「環境問題への取り組みとして日本は我慢するという選択肢を選びがちといわれ、環境問題の解決に意欲的ではない理由がわかりました。」「我慢ではない、人々が前向きになれるようなコミュニケーションを考えたい」という声があります。
聴講者一同はこの度、江守さんから、「クライアントさんへの提案で、我慢ではなく前向きに取り組む意識をつくってほしい」と託されました。
私たちは企画の力でSDGsへの貢献を目指す中で、私たちの最も得意とする「コミュニケーションづくり」でパートナーシップを発揮し、前向きな脱炭素社会の実現に向けて、社会を変えていきます。


江守正多さん
東京大学 未来ビジョン研究センター教授
国立環境研究所 地球システム領域 上級主席研究員